広島県福山市のはしっこにある、
就労継続支援B型作業所「トテチテタ」。
のぶさんは、今日も木工室で
鞆の浦のお土産品づくりを見守っていた。
木の香りがふわっと漂う、
なんとも落ち着く場所だ。
体調を崩しがち
その日の朝、タケルくんが
少し遅れてやってきた。
「のぶさん。今日、ちょっとしんどいです」
のぶさんは慌ててしまった。
(また体調か。どうしたらいいんだろう)
つい「無理しないようにね」と言いながら、
心の中では焦りがぐるぐるしていた。
水面上だけ見ていた頃
タケルくんは最近、
作業に取りかかるまで時間がかかる。
木を持ったままぼーっとしていたり、
急に休憩に行ったり。
のぶさんは、
その目に見える行動ばかり気にしていた。
- 取り掛かりが遅い
- 集中が続かない
- 休憩が多い
(どうにか改善しないと!)
焦る気持ちが先に立っていた。
ある日、気づいた水面下
昼休憩のとき、タケルくんがぽつりと言った。
「木を切る音が、最近ちょっと怖いんです」
のぶさんはハッとした。
(え?そこ?)
タケルくんは続けた。
「前に、家で大きな音がして
それから、急に音にびっくりするようになって」
のぶさんは、
水面上の行動しか見ていなかったことに気づいた。
水面下にはいろんな要因がある
タケルくんの背景には、
- 生理的な要因(音への過敏さ)
- 気持ち(不安)
- 過去の経験(家での出来事)
- 環境要因(木工室の音)
が複雑に絡み合っていた。
「取り掛かりが遅い」という行動は、
その氷山のほんの先っぽだった。
対応を変える
翌日からのぶさんは、
木工室の端に、静かな作業スペースを作った。
タケルくんはそこで、
音の少ない作業から始められるようになった。
すると
「のぶさん、今日はちょっと頑張れそうです」
タケルくんの表情が、
ほんの少しだけ明るくなった。
のぶさんの学び
のぶさんは思った。
水面上の行動だけ見て焦っても、
本質的な解決にはならない。
まずは水面下を一緒に見つけることが大事なんだ。
トテチテタの木工室には、
今日も木の香りと、
ゆっくりと前に進む人たちの物語が流れている。



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